2024年12月17日火曜日

ワイヤレスイヤホン探しの旅 + INZONE Buds レビュー

 Anker VR P10 からの乗り換えで色々探してみた。

Anker VR P10の不満点は以下の通り。

  • バッテリーの持ちが悪い
  • 曲を聴くときには向かない

この辺を踏まえて、以下の条件で新しいイヤホンを探してみる。
  • 単体バッテリー持ち10時間以上
  • LC3対応(必須)
  • ドングル対応(できれば)
  • オーディオ用に高音質コーデックどれか(LDAC/aptx Adaptiv/aptx Lossless)
この条件に合うイヤホンやそれに近いものをいくつか挙げてみる。

① LinkBuds S

LC3での接続が何度やってもできなかった。 

② XM5

LE AudioとClassic Audioの切り替えに再起動とペアリングが必要なので使い勝手が悪い。LinkBuds Sが繋がらなかったので試しに繋いでみただけ。バッテリー持ち的にナシ。

③ INZONE Buds

LE Audioのみ対応なので、接続切り替えとかは不要。音質は全体的に薄めでキック感がない。良く言えば聞き疲れしにくい。VR P10の付属ドングルはオプション品で単体販売があるが、INZONE Budsのドングルは単体販売あるのだろうか。ドングルの作りもちゃっちくて、パススルー充電もできない。バッテリー持ちは優秀。候補①。

④ Sennheiser MTW4/ATW1

まだLC3のアップデートは降ってきてない?のにAuracastの項目はあって、挙動が謎。バッテリーの持ち的にナシ。

⑤ ATH-CKS50TW2

Sonyと同じくLE AudioとClassic Audioの切り替えに再起動とペアリングが必要。音質は最も好みだがLDAC非対応。マグネットで電源オンオフするのは面白い機構で、バッテリー持ちは一番優秀だがケースと本体ともに大きくてダサい。一応候補②だがドングル接続ができない。FIIO BT11がLE Audio対応すればそこそこ使えるのだろうか。

⑥ ANW02

再起動不要でLE Audioが使える。接続や切り替えが簡単で対応コーデックも幅広くて良いが、音質が全く好みではなかった。

⑦ JBL TOUR Pro3

LC3はアップデートにより対応予定らしいが、現時点ではケースをトランスミッターとして使うことができ、その場合はLC3の上位規格であるLC3 plusでの接続が可能。ドングル接続はできないが、ドングルをなくす心配がない点は面白い仕組みだと感じたが、ケースのバッテリーの心配が出てくる。ドングル接続の場合は端子折れとかが気になる反面、ケーストランスミッターの場合は最悪ケーブルが壊れるだけなので、総合的な取り回しはいい、ような気がする?どっちにしろ予算オーバーなのでナシ。

⑧ Redmi buds 5/6 pro

未試聴。聞ける場所がなかったがスペック的には最強。

⑨ Redmi buds 5/6 pro eSports

未試聴。国内未発売。ドングル接続対応でパススルー給電可能な上、最大67W給電できる。購入ルートが限られている上にバッテリー持ちが他の候補に比べて少し短い。

⑩ VR3000 Wireless

ドングル対応ではあるがバッテリー持ちがINZONEよりも悪くLC3非対応なので対象外。ケース側にドングルを収納する部分がないのもいまいち。


最終的にCKS50TW2とINZONE Budsで迷ったが、個人的にオーテクの方がなんとなく好きじゃないので、INZONE Budsを購入した。

INZONE Buds レビュー

遅延測定

Android / iOS でのオーディオ遅延を測定できるアプリ「Superpowered Latency Test」を使用して、Androidスマホ / 有線 / Anker VR P10 / INZONE Budsの遅延をそれぞれ調べてみた。iOSのアプリはテスター上限?で試せなかったので、Androidのみの計測結果を以下にまとめる。

有線 Classic Audio LE Audio ドングル
AAC SBC 接続優先 低遅延
Apple USB-C -3.5mm 26ms
Anker VR P10 494(468)ms 345(319)ms 105(79)ms(LC3)
INZONE Buds 145(119)ms 80(54)ms 145(119)ms(独自)
()内はApple USB-C - 3.5mm を基準にしたときの実質遅延。

VR P10のLC3接続はドングルのみで使用できるので、Androidと直接接続できる他のLC3イヤホンとでは遅延の度合いが異なる。INZONE Budsとの比較になるが、ドングル接続のLC3のほうが基本的には低遅延といえる。試聴した他のイヤホンは体感(*)ではINZONE Budsの接続優先モードとの違いは感じなかったので、測定値で言えば150ms程度になると予想できる。これらLC3対応イヤホン同士の遅延の差は体感では感じなかった。INZONE Budsのドングル接続がVR P10のドングル接続より遅延が大きい理由はわからないが、INZONE Budsは2.4GHzの独自規格、VR P10はLC3とその違いなのかもしれない。

上記の表から有線イヤホンとワイヤレスイヤホンの遅延はVR P10なら79ms、INZONE Budsなら54msで、これは120fpsのゲームなら約3~5フレーム、60fpsのゲームなら約6~10フレームの遅延となる。この程度の遅延であれば、音ゲー(要設定)やFPSを含むほぼすべてのゲームで問題なくプレイできる。個人的には音ゲーはタイミング設定をしてタップ音を消せばLC3ほどの低遅延を狙わなくともプレイできるが、「プレイヤーの入力で発生した効果音を基準に次の操作を行う」タイプのゲーム、例えばFPS/TPSや格ゲーのほうが遅延に厳しいと思う。特に格ゲーではFPS/TPSと違ってタイミング自体もシビアなのでより遅延に厳しいが、自分は格ゲーをやったことがないので、実際にどの程度の遅延から不便に感じるのかは不明だ。

*…PUBG Mobileの訓練場にて、フリックしたときのグレネードの爆破音の定位の追従性を確認した。

接続安定性

INZONE Budsの接続にはかなりクセがある。片耳が繋がらない、片耳だけ音が途切れる、再生/停止などのコントロールが効かない、といったエラーが多い。ドングル接続時にそういうトラブルが起きやすいとレビューで見ていたので、そのあたりをきちんとケアしていたが、かなり不便だと感じた。特にドングルとLC3接続の切り替え時に起きやすいエラーで、このへんはVR P10のほうがストレスなく使える。

ソフトウェア/色々な機能

PCではINZONE Hub、AndroidではHeadphone Connect(現Sound Connect)を使用する。色々な設定項目のうち、タッチセンサーの割り当て以外ほぼ独立となっている。イコライザーはINZONE HubとSound Connectでそもそもバンド数が違う(前者は10バンド、後者は5バンド)し、立体音響に至ってはINZONE Hubでしか利用できない模様。ドングルをスマホに挿して使ってみたが立体音響の効果はなかった。というかそもそも、360 Reality Audioと本機の立体音響とは別物のようだ。音場の個人最適化で使うアプリの名前が「360 Spatial Sound Personalizer」なのがややこしい。Sonyの360 Reality Audioの認定リストに本機がないので、非対応ということなのだろう。INZONE Hubではイコライザーや立体音響の設定はプロファイルに保存でき、フォアグラウンドのプロセスに応じて自動的に切り替えしてくれる設定もできる。ゲーム起動中は立体音響をONにするといった感じで使えるが、ゲーム終了時にデフォルトのプロファイルに戻す機能がない。さらに、プロファイルごとにプロセスを割り当てるのではなくプロセスごとにプロファイルを割り当てるので、アプリ連動設定の数がすごいことになってしまう。

立体音響ON/ダイナミックレンジコントロール高のプロファイルをゲームに割り当て、
それを戻す用にexplorerをデフォルトに割り当てる。

Androidで使用する(Bluetoothモード)場合、OSの機能ではイヤホンのバッテリー情報を取得できない。イヤホンによってはバッテリー残量が少なくなるとAndroidが通知をしてくれるが、バッテリー情報をOSが取得できないため通知してくれない。LE Audioの仕様と思われる。そこで、バッテリー残量を確認するためにいちいちSound Connectを起動する必要があるが、アプリを起動してからイヤホンの情報が表示されるまでかなりかかるので使い勝手は良くない。そのほかイコライザーの適用や調整も行えるがそちらの使い勝手も良くない。ANC/外音取り込みはタッチセンサーから切り替えできるのでアプリで切り替える必要はない。

Android/PC共通の設定であるタッチセンサーの割り当ては、一般的な機能の他に、ゲーム/チャットのバランスが設定できる。これら音量周りの仕様がかなり曲者で接続先によって挙動が異なる。Bluetoothモードでの接続時にタッチセンサーから音量を上下させると、「Androidの音量」が変わる。ゲーム音/チャット音のバランス調整は、Bluetoothモードでは非対応なので音量の変化はない。ただこの時にUSBトランシーバーがPCに挿さっていると、BluetoothモードでAndroidと接続しているのにも関わらず(つまりイヤホンはPCには接続されていない)イヤホン内部でゲーム音/チャット音のバランスが変わる。Bluetoothモードではゲーム音/チャット音のバランス調整は存在しないので、USBトランシーバーモードでPCに接続してINZONE Hubで確認すると「ゲーム/チャットバランス」のスライダー位置がちゃんと変わっている。一方USBトランシーバーモードでの接続時はINZONE Hubの「マスター音量」が変わる。これはPC接続時に限らず、iPadやiPhone、AndroidとUSBトランシーバーで接続している時も同様だ。いくつかのレビューでイヤホンの音量が小さいとの指摘をみたが、デフォルトの「マスター音量」は最大値の半分になっており、USBトランシーバーモードで使用するとその音量が適用されるためだと思われる。マスター音量を最大にするとBluetoothモードと音量が同じになる。また、AndroidにUSBトランシーバーモードで接続している時は、「Androidの音量」はイヤホンのタッチセンサーから調整はできない。ゲーム音/チャット音のバランスは前述のBluetooth接続時と同様、内部的に変化しているがPC以外効果はない。

マルチポストは、USBトランシーバーモード時に、ペアリング済みのLE Audio端末をサブとして設定できる。PCやiPadで使用中に電話がかかってきても自動で切り替えてくれるが、同時接続なのでバッテリーの消費は増えるはず。Bluetoothモードを使用中にマルチポスト機能は使用できない。

ANC、外音取り込みどちらもおまけ程度の機能で、ぎり使えなくはないかなという感じ。ANCは高音域のカットが甘いが、それ以外の部分はカットしてくれる。ただし、無音状態だとホワイトノイズが逆に目立ってしまい違和感が強い。元々カナル型というのもあって、イヤーピースでしっかり密閉すれば素の遮音性が高いので、余程の騒音環境でない限りANCは不要だ。外音取り込み機能の方がANCに比べてまだ実用的だが、話し声を強調するボイスフォーカスをつけて、取り込みレベル最大にしないと話し声が聞き取りにくい。

バッテリー

単体でLC3接続24時間持つ(公称値)のはもはやバグレベル。快適すぎる。8時間使って残量64%。価格帯的にワイヤレス充電対応していないのは少し残念。 

音質

全体的に薄いが、イコライザーでギリカバー可能な範囲。今まで使ってきたスマホ用イヤホン(E2000、Galaxy Buds Live、Anker VR P10)よりも良かった。個人的に良かったイコライザープリセットはExcitedだった。低音の締まりがもう少し欲しくてイヤーピースを変えてみたところ、低音の量と厚みは増えたが締まりはどうにもならなかった。あえて低音域を下げて、Clear BASSを増やすとわりかし良い感じになる。ボーカル域は特に問題ないが定位が若干遠い。このへんが多分「全体的に薄い」っていう評価になるんだと思う。高音域の抜けも良くはないが、イコライザーで持ち上げてもあまり改善されないし変に高音域が刺さる。

LE Audioの罠

LE Audioの最大の問題点は、多くのボイスチャット系アプリとの相性が非常に悪い。アプリ側の対応問題なのか、LE Audioの制限なのか、たとえば定番のパラレルやDiscordではマイクを認識しないし、PUBG Mobileではマイクオンにすると本体から音がでてしまう。せっかくゲーム用かつドングル不要で実用的なイヤホンなのに、VCができないんじゃその真価を発揮できない。この問題はUSBトランシーバーモードで解決できるが、充電端子を塞ぐ問題が再発してしまう。これ試聴した時に気づかなかったし、ATH-CKS50TW2のようなドングル対応していないイヤホン買ってたら詰んでた…

その他

ドングルの作りはやっぱりちゃっちい。VR P10よりいい点は、端子の位置が偏ってるので隣の端子を塞がないことぐらい。ケースに収納する部分もVR P10に比べてマグネット吸着が弱く無くしやすい。ケースの大きさも厚みがありポケットに入れて持ち運ぶのはちょっと邪魔になりそう。ケースが大きいからか、イヤーピースはかなり大きい(長い)サイズまでケースに入る。イヤホン本体はタッチセンサーの部分がわかりやすいのでVR P10よりも誤爆しにくい。

Anker VR P10 (左)とINZONE Buds(右)のドングル

INZONE Buds (右)の方がドングルが抜けやすい。

Anker VR P10(左)は隣のポートを塞いでしまうが、INZONE Budsは塞がずに使える

まとめ

バッテリー持ちが良くなかったAnker VR P10からの乗り換えでINZONE Budsを選んだが、として概ね満足いく結果だった。Bluetoothの次世代オーディオであるLE AudioのLC3コーデックの低遅延さは十分実用的なので、音質面の進化としてLC3 plusの方も気になるところだ。遅延面では優秀な一方、VCのアプリ対応状況が壊滅的な点は注意する必要がある。

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